会社法改正要綱案・各論(4)補償契約

 第4回目となった今回は、取締役等への「補償契約」規定の新設を取り上げます。
 補償という概念は、会社法では初めての用語だと思われます。簡単に言えば、取締役がその職務の執行に関して発生させた費用や損失の全部又は一部を会社が負担してくれることです。これまで、このような「補償」制度は、会社法には存在していませんでしたが、実務では、一定程度行われていました。例えば、取締役が第三者から責任追及をされた場合で、取締役に過失がないような場合には、その取締役が要した裁判等に係る費用は、会社法330条や民法650条を根拠に、会社からの補償が認められているのです。
 しかし、このような実務を安易に野放しにすると濫用のおそれもあることから、特に、構造的には利益相反取引の範疇にはいるので、手続規制を導入することにしたのです。
 「役員等に対して次に掲げる費用等の全部又は一部を当該会社が報償する契約」を「補償契約」と定義し、この「補償契約」を締結するためには、取締役会の決議によらなければならいとして、取締役会の専決事項とするという考え方を示しました。もちろん、会社法423条の過失がある場合や、会社法429条の悪意又は重過失がある場合には、補償ができないというブレーキも示されています。


投稿者名 池野 千白 投稿日時 2019年04月04日 | Permalink