商法(運送・海商)の改正(3)荷送人の危険物通知義務
旧商法には、高価品の特則はあっても、危険物に関する特則は置かれていなかった。しかし、新法は、国際海上物品運送法ないし最近の判例の動向などを踏まえ、危険物に関する規定を新設した。
具体的には、運送人に対して、危険物を運送する場合には、引き渡しの前に、その旨及び当該存送品の品名、性質その他当該運送品の安全な運送に必要な情報を通知する義務を、荷送人に負わせた(新商法572条)。
危険物の定義については、消防法等に様々な詳細な定義があるが、これらの特別法とは異なり、六法という一般法的法律の一つである商法という性質に鑑み、抽象的に、「引火性、爆発性その他の危険性を有するもの」という定義に止めた。この点は、実際の法適用において、新たな解釈論を必要とすることになる。
また、通知をしなかった場合の荷送人の損害賠償責任については、無過失責任という議論もなされたようであるが、最終的には、無過失責任とすることは見送られた。