C1(15) 表現
作者が表現しようとしたことに、どんな意味があるのか。
人間がそれぞれ個人として尊重されるように、作者もそれぞれ尊重される。
作者が表現しようとしたことの意味は、受け手との関係で、様々な評価は可能だろう。
(1)人物画
ハプスブルグ家の財宝を見ても、一族の人物画は多く描かれている。これは自己を保存し、記録として残したいという望みからだろう。
しかし、そのような望みは、写真技術によって安価に、手軽に実現できるようになった。
絵画は、写真の登場によって、その意義を移さざるをえなかったことは明らかだろう。
(2)自然(たとえば樹木)を描く人は、その中に何がしかの人間を超えるものを感じ、そのことを表現していることが多いと考える。この「人間を超えるもの」は神と言って良いだろう。八百万の神を信ずる人であれば、自然の中には神が多数宿っていると感ずるだろう(一神教の世界の人は、どのように感ずるのか知らないが。)。
(3)具象を対象としているからと言って、作者が表現したかったことが、その具象にあるのではないことがある。
この点は、作者からの説明がなければ通常はわからないことだろう。
(4)絵画では、インパクトが必要か。
インパクトのための逸脱、人間離れした技巧、細密描写など、人は驚き、引き付けられる。その点では、インパクトがあった方が良いのだろう。しかし、インパクトのためのインパクトは、それを続けるとき、行き詰まりとなって感じることになる。