B10 ブレイクする前の作品
美術作家は、世界中どこでも、どのように収入を得て、生活するかという問題をかかえながら、作品の制作に取り組む。
その作家がブレイクして、人気作家となれば、収入の不安は解消されるだろう。しかし、そうなる前の段階では、評価を得るために、作家それぞれに苦闘すると思われる。
したがって、作家の初期、中期の作品には、このような苦闘が何らかの形で表れるのではないかと考えている。
草間彌生の「花を踏みしだく」から「靴をはいて野にゆこう」への間にも、それを見つけることができるのではないかと考えている。
草間彌生が世界的にも認められ、一般の人にも受け入れられるようになった後、部屋を一杯にする水玉の作品が生まれている。その作品は、巨大な画面一杯に展開するネットの作品に遡るのかもしれないが、精神的病いを感ぜざるをえない作品からそれが払拭されたものへと大きく展開している。
このような大きな展開の起点が、「花を踏みしだく」から「靴をはいて野にゆこう」への変化にあると考えている。