A5 ジョルジュ・ブラック(1882ー1963)
1 ピカソと共に、キュビスムの創始者として位置づけられるフランスの作家であり、キュビスムの作品は、ピカソの作品なのかブラックの作品なのか、にわかに判明しがたいほど似ている。
しかし、その後の展開は異なり、共にキュビスムの作品から変化したが、ピカソが大胆にめまぐるしく展開し、名前が知れ渡っているのに対し、ブラックは、静かに自分の世界を展開したように、私はとらえている。
ブラックは、ピカソほど誰でも知っているという存在ではないが、私は、個人的にはブラックの作品の方が好きだ。
ちなみに、セルフポートレイト作品で有名な森村泰昌は、「高校生の私が影響を受けたのは、結局ピカソではなくブラックのほうでした。プラックのその後の絵は、とても上手な絵になっていったのに、ピカソは『ヘタくそ』で参考にはならなかったからです。」(「踏みはずす美術史」110頁)としながらも、最終的には、「『泣く女』が『ウマいかヘタか』と問われたら、私は躊躇なくすべてにおいて『ヘタくそ』だと答えます。しかし、『ヘタくそ』ゆえの明るさやおかしさのおかげで、この絵は『名作』たりえたとつけ加えたいとも、思います。」(同116頁)と評価している。
2 ブラックは、1910年(28歳)に鳥を描いていたと言うが、晩年が近づくにつれ、鳥をモチーフにした作品が多くなると思う。
その心境には特に興味があり、私なりにいろいろと想像している。
ルーブル美術館のアンリ2世の間の天井画として描かれたものが有名だと思うが、鳥の絵は、どの作品も不思議であり、その鳥自身とブラックの考えと自分自身とが絡み合って、どこまでも考えさせられる。鳥は自ら一人(一羽)で飛び、その空間はどこにあるのか不確定で、現実とも心象ともとらえられる。
おそらく、いろいろな解釈があり、研究されているのだと思うが、自立、孤独、隔絶、自由、一途、執着のなさ、といった矛盾する点も含めた存在を楽しめると考えている。
3 ジョルジュ・ブラックの色調
水色とグレーを基調としたブラックの作品を掛けてみると、フランスでの車
窓で見た色調と同じものを感じた。
フランスの建物は、屋根部分にグレーを用いているような印象を受けている。