A12 笠井誠一(1932ー )

 卓上に置かれたプルーン、洋梨、ボトル、ポット、マンドリン、フルート、ドリルなどの組み合わせの絵は、すぐに笠井の絵とわかる。
 「笠井さんにとっては絵は一つのコンストラクション(構成物)であり、物の形と色のぶつかり合い、響き合いが自ずと作りだす緊張と均衡とが生みだす一つの小宇宙の創造が目的」とされる(遠藤恒雄)。
 具象画であっても、対象物自体やその組み合わせから出てくる構成、リズムと言ったものを表現しようとされているのだと思う。
 笠井が受けられた教育、フランス留学、教員としての生活、作家としてのスタートなどを読むと、私にとって現代美術の作家なのだと思う。
 現代美術というと、難解であったり、従前と異なる表現に走ったりして、私自身、特殊な世界という感覚を持っていた。しかし、現代美術の作家の言葉を読むにつれ、また、一連の作品を見るにつれ、私は、現代美術の作品がもつ感覚を受け入れるようになったと思う。
 すると、現代美術的でない作品が、古く思えることも生じてくる。しかし、同時代の作品は、現代美術として存在していることに変わりはない。
 詳細な美術史としての流れを、私は理解しているとはいえない。しかし、一見オーソドックスととらえられる作品と「現代美術的」ととらえられる作品とに壁を作ることなく、連続線上にあるものと理解しても良いと考えている。


投稿者名 管理者 投稿日時 2011年12月01日 | Permalink