A19 池田亮司(1966ー )
数学とアートの関係について、数値・数式に基づく客観的な説明ができるのかどうか私にはわからない。
+/―[the infinite between 0 and 1]に記されたいろいろな人の文章を読んでも、客観的な説明、対談があったといえるか不明である。
むしろ、端的にベネディクト・グロスの次の言葉に全てが表現されているように思う。
「きっと数多くのフランス人数学者がこの展覧会《V≠L》を観に来ることでしょう。美術館で数学を観たいからというだけでなく、それがなによりもクールで格好いいものだからです。」(84頁)
この言葉は、数学者でない人にとっても同様だと思われる。
ベネディクト・グロスは、「アートという領域の境界線と数学者が立っている領域の境界線は、あちこちで接しあっている」旨を述べる(81頁)が、「接しあっている」というのは、たぶんに比喩的な表現であって直観的なものであると思われる。
アートの立場から言えば、このような直観に基づく数学への敬意が、「クールで格好いい」と感ずることの理由だろう。
そこには、数学を含めた科学への親和性が認められる。