子供の社会化
日本の乳幼児は、欧米との比較で、母親と共に過ごす時間が多いことが指摘されている。
ところが、最近の日本では、必ずしも、そうでない母子がいて、乳幼児期に、本当に密な情緒交流がなされないことが問題となって現れていると考える人がいる。密な情緒交流があることによって、攻撃性や不安の点で、日本の幼児は、怒りっぽくもなく、こわがりでもなく、非常に周囲とうまくやっていくと指摘されている(正高信男著「ケータイを持ったサル ?『人間らしさ』の崩壊?」20頁)。
しかし、母子密着型の子育てにも弊害があることが指摘されている(同26頁)。日本では居心地のよい母子密着状態が延々と継続するため、子供は、社会的な交渉が少なくなり、子供の社会化に悪影響を及ぼすというものである。
たしかに、アメリカ社会を経験した人の話をきくと、アメリカでは、大学生になれば、子供は、男女を問わず、両親から独立して生活するのが当然という感覚がある。学費も、子供が自らアルバイトをして稼ぐのが当然という感覚もある。
これに対して、日本では、親元から通学できる大学の場合、親元から通うことも多い。アルバイトの点は、大学の授業よりもアルバイトをしたいという学生も多く、アメリカとの差はあまりないようにも思われるが、その精神は大きく異なるのかもしれない。
乳幼児期から大学生の時期まで、親子の距離をどのように持つかは、改めて考えてみるべき問題であり、実行が伴う必要がある。