承継は、単に親から受け継ぐことだろうか。
事業を維持・展開してきた親は、その事業が成功しているほど、その事業が世の中で1番重要なものと見る。そうは見ないよと言う人でも、自分にとって1番重要なものと見るだろう。
すると、その重要なものを、どのように子に承継させるかという考え方になる。そうなると子の方でも、親の持っている重要なものをいかに引き継いでいくかという考え方になる。
しかし、私が経験し、観察するかぎり、事業の承継とはそのような単純なものではない。物の所有権(会社の株式)であれば、親から子に単純に移転するだろう。しかし、事業を維持・展開していくためには、親のものを子が承継するという考え方では成功しないだろう。そもそもそのような考え方の子では、事業を維持・展開するだけの力量がないだろう。
私が観察するに、子は子で自分の事業を創出し、展開していることが不可欠である。同じ会社の中では、法的な意味で、子の独自の事業とは認識されないかもしれないが、子は、自ら、また、自らのスタッフと協力して事業を創出しなければならない。そして、それを成長させる中で、子自身も力量をつけていく。
そのうちに親に万一のことがあっても、子は親の事業を吸収するように自分のものとする。これが承継のイメージである。