5 判例の具体的検討
判例の検討にあたり、判例の一応の分類として次のとおりの軸を採用した。
(1)企業の経営状態が、平常時か危急時か。
(2)経営行為が、新規に拡大するものか従前の負担を継続ないし増加させるものか。
番号は後述の判例番号である。
新規拡大 | 負担の増大 | |
---|---|---|
危急時 | 2479 | 136810 |
平常時 | 11 | 5 |
青:責任について積極判断
赤:責任について消極判断
判例1(東京高昭50.1.29 判時 771. 77)
大口取引先の経営状況の悪化を看過し漫然取引を継続した結果、その取引先が倒産した時点で自社の 支払が不能となったケース
(東京地 昭53.2.24 判時 906. 91)
極めて貧困な収支状況下で相当高額の広告申込をなしたことは、経営者に許された合理的裁量の域を 超えたものであるとして代表取締役に職務執行上少なくとも重大な過失があったとされた。
判例3(東京地 昭53.3.2 判時 909. 95)
経営状況が逼迫した状態での借入行為
判例4(東京地 昭55.9.30 判時 1005. 161)
新規の出版
判例5(福岡高 昭55.10.8 判時 1012. 117)
経営が破綻に瀕した子会社に対する融資の継続
判例6(名古屋地 昭57.3.11 判タ 475. 188)
取引先への融通手形振出による仮払金の累積
判例7(東京高 昭60.4.30 判時 1154. 145)
新たに債務を負担すべき契約締結
資金繰りの方途につき全く目鼻が立たず、下請業者に対し下請代金を約束どおり弁済できる見込みが 極めて少なかったにもかかわらず、横浜市から請負った中学校体育館新築工事のうちの木工事を下請させたケース。
判例8(大阪高 昭61.11.25 判時 1229. 144)
下請企業への融資
相手先の営業の失敗からではなく、相手先が融通手形を交換しあっていた企業の倒産に関連して倒産 した。
判例9(東京地 昭62.9.30 判タ 665. 214)
都心の土地買収にあたり、テナントの立退きについて協力する旨の同和団体からの誓約書を取得しよ うとしてそれを取らずに手形を交付したが、結局誓約書をもらえずプロジェクトが実現できなくなったケース
判例10(東京高裁 平1.2.28 判 タ 723. 243)
支払手形の振出
経営の悪化した有限会社の取締役が製品材料購入のため手形を振り出したが結局倒産したケース
判例11(東京地 平5.9.21 判時 1480. 154)
株式投資