子ども手当の盲点
平成22年6月から子ども手当制度がはじまり、まもなく2年になる。
子どもの両親が、別居して離婚の調停や裁判をしている場合、これまでは「子どもの生計を維持する程度が高い者」(要は父母の収入の多い方、多くの場合は父親)に対し子ども手当は支給されていたが、平成23年10月から制度が改められ、子どもを実際に養育している親(子の両親が別居をしている場合、子と同居している親)に支給がされるようになった。
平成23年10月の制度の改正後、子どもを実際に養育している親が、子ども手当ての受給を受けるには、
?別居している証明(養育している親と子の別居後の住所の住民票)
?離婚調停ないし離婚訴訟をしている証明(裁判所が発行する事件の係属証明)
を必要書類として準備して、市区町村で手続を行う必要がある。
ただ、上記の必要書類には、別居している証明として、養育している親と子の別居後の住民票が必要とされているとの点で、懸念される問題点がある。
すなわち、婚姻関係が破綻し、別居をして、離婚調停や訴訟をする夫婦の全てが、住民票を別居後の実際の住所地に移動させているかというと、実際はそうではない。
例えば、DV(モラルハラスメントも含む。まだ警察への相談や接近禁止の手続きをとっていない場合)や子の連れ去りの可能性が予測できる者が相手方となった場合、子を養育している親は、別居先の住所を相手方に知られることを恐れて、別居後の実際の住所地に住民票を移すことはできず、住民票は従前の住所のままにしておくことが多いのである。
住民票が別居後の住所地に移していないために、実際に子どもを養育している親が子ども手当を受け取れないというケースがあるのである。
確かに、市区町村が、不正受給やトラブルを防止するために、別居している証明として、養育している親と子の別居後の住民票を求めている事情も分からなくもない。
しかし、子ども手当は、子どもの養育費として必要不可欠な原資なのであるから、両親が別居している場合、子どもを実際に養育している親の手元にきちんと届ける必要がある。特にDV等で住民票を移せないようなケースの場合、相手方から生活費の支援を受けることは難しいことが多いから、子ども手当は、子どもを養育する親にとって、なおさら不可欠な公的支援である。
子どもを養育している親が、住民票を移さずとも、子ども手当を受け取ることができるよう、市区町村等の行政機関においては、住民票以外の方法で、別居の事実を確認する代替措置を講じることができないか、検討いただきたいものである。