シェルブールの雨傘
53歳の年齢になって、初めてDVDで見た。
設定は、フランスでの、1957年11月からの、ギィ(20歳・男性)とジュヌヴィエーヴ(17歳・女性)の物語。
若いときに見ていたとしたら、ギィが徴兵によりアルジェリア戦争に出ている間に、ジュヌヴィエーヴが、ギィの子を妊娠していながら、1958年4月に、別の男性(カサール)と結婚し、パリに移住してしまう展開は理解できず、違和感が残ったままだろうと思う。
しかし、年齢を重ねた今は、「ありうるかもしれない。」と思う。
私の昔と今との違いは何なのか。若いときは、価値観を絶対視していたところがあるが、年をとるにつれ、人間は、状況の変化に合わせて生活していくものではないかと考えるようになったことだろう。
物語では、1963年、ギィの妻(マドレーヌ)と息子(フランソワ)がクリスマスの買物に出て行った間に、ギィのガソリンスタンドに、ジュヌヴィエーヴが、それと知らず、娘(フランソワーズ)を助手席に乗せて給油に来た。ギィは、ジュヌヴィエーヴを事務室に招き入れたが、短い言葉のやりとりのみで、「もう車に戻った方が良い。」という言葉に促されて、ジュヌヴィエーヴは、スタンドを出て行く。すぐにギィの妻子が戻り、クリスマスを祝う家族のシーンで終わる。
これは悲恋なのだろうか。ジャック・ドゥミ監督は、恋愛(ある価値観)を絶対視せず、状況に合わせて生きていくことを自然に受けとめており、身近に十分な人生(現実解)があることを唱えたように思う。