債務者の信用情報調査

無い袖は振れない

 『無い袖は振れない(手元不如意)』という状況が,債権回収にとって一番不味い状況になります。相手方に返済能力があることを確認することは,取引の開始前に債権者が成すべき必須の行動です。
 債務者に任意に見せて貰えるのであれば,貸借対照表・損益計算書,勘定科目内訳書を拝見した上で,取引を開始することが肝要です。

財産の強制開示は難しい

 強制的に財産状況を開示することは,対象財産を特定した場合に,弁護士照会制度,裁判所の調査嘱託制度等を利用して可能です。しかしながら,対象財産の所在をある程度特定する必要があり,危機時期には回答を得るまでの間に財産隠しに遭う可能性も少なくありません。
 その意味でも事前の信用情報調査は,予防策の中核的要素と言っても過言ではないでしょう。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2017年02月20日 | Permalink

契約書類の作成

契約書がない?

 未回収の売掛金・貸付金等が存在する場合に,「その債権が本当に存在するのか?」と言う点で争いになります。この問題は,債権証書(契約書,発注書・請書,支払約束証書等)が存在していれば,すぐに証明可能です。
 ところが,中小企業の多くが,こうした債権証書に不備があったり,そもそも作成していないケースが散見されます。まずは,しっかりとした契約書類を残すことが,予防策のはじめの一歩です。

契約書類の不備に要注意

 契約書を作成するに際して,債務者・債権者のパワーバランスによっては,不利な条項を含む契約書を受け入れざるを得ないことがあります。危機時期におけるリスク(約定解除・期限の利益喪失条項・相殺適状条項・損害賠償予約等)は,優越的な地位を有する大企業側に有利になりがちで,契約書の内容如何によっては,中小企業の債権回収が困難になることもしばしばあります。
 一方で,独占禁止法・下請法等によって弱い立場の企業が保護される場面もあります。契約書を締結する場合に,しっかりとリーガルチェックを受けることを怠らないようにしたいものです。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2017年02月20日 | Permalink