婚姻費用とその分担義務

 婚姻費用とは,夫婦及び未成熟子によって構成される婚姻家族が,その資産・収入・社会的地位等に応じた通常の社会生活を維持するために必要な費用を指します。その中核的要素は,夫婦の生活費と未成熟費の養育費ということになります。
 婚姻費用は,生活保持義務として,夫婦で分担するものとされています(民法760条)。これが,いわゆる“婚姻費用分担義務”であり,収入の多い者が義務者,収入が少ない者が権利者として,費用の分担を請求することができるのです。

婚姻関係が破綻している場合

 婚姻費用分担義務は,生活保持義務としての性質上,婚姻関係が破綻していたとしても存続すると解されており,その結果,別居中の義務者から権利者に対して請求されるのが通例です。

有責配偶者からの請求の場合

 婚姻費用分担金を請求する者が,婚姻関係破綻の主たる責任を負っている場合(有責配偶者),裁判例では請求者自身の生活費相当部分は権利濫用(民法1条3項)を理由に制限され,同居する未成熟子の養育費相当部分のみ請求が認められています
 当職が担当した事件でも,同様の審判が下されています。

婚姻費用分担金の支払始期・終期

 実務では,請求時(大多数は調停申立時)から具体的権利として発生し,婚姻の解消又は別居の解消時に終了すると考えられています。
 始期を考慮すれば,別居等を断行して生計を別にした場合には,速やかに調停を申し立てることが肝要です。もっとも,請求時以前の未払部分については,最終的には財産分与による清算の余地があるので,諦める必要は無いでしょう。

家事調停・家事審判による裁定

 婚姻費用分担金については,離婚訴訟において附帯して請求することができないため,当事者間で話し合いが出来ない場合には,必ず家事調停・家事審判を経て裁定していただく必要があります。家事調停・家事審判は,弁護士のみが手続代理人として関与できる分野ですので,1人で悩むことなく是非ご相談下さい。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2016年04月15日 | Permalink

製造委託における“指定”

 下請法が予定する取引区分のうち,製造委託(法第2条1項)とは,事業者が他の事業者に物品の規格・品質・性能・形状・デザイン・ブランド(以下,「規格等」と略します。)を指定して製造を委託することを指します。
 なぜ,“指定”されることが要件となっているかといえば,下請事業者は製造した物品を親事業者に納めることで報酬を得られるところ,対象物品の規格等が親事業者の特別なオーダーが存在する場合,それに叶った物品を供給しなければ適正報酬は得られないため,その判断如何について親事業者の優越的地位が存在するからです。

規格品・標準品の購入は?

 製造する物品が,親不業者の指示を受けなくても内容が特定できる統一規格品である場合又は下請事業者がパンフレット等で紹介している標準商品そのものである場合,親事業者から規格等の“指定”が存在しないため,製造委託に該当しなくなる余地があります。
 もっとも,規格品・標準品であったとしても,それに付加して親事業者が下請事業者に加工を希望した場合には,“指定”したと判断される可能性があります。
 例えば,供給先を明確にするためのシールを貼らせたり,親事業者の仕様に沿って幅を切断したりする等,些細な作業を付加しただけでも,“指定”に該当すると考えられています。下請事業者保護の観点から,“指定”の判断は緩やかに解釈されている実情に,注意が必要です。

プライベートブランドの製造委託にはご注意を!

 近時,スーパーや量販店といった大規模小売業者・卸売業者において,製造メーカーに対して特定商品(既製品)を大量発注し,プライベートブランドとして商標を代えて提供することがまま見受けられます。大量発注故に価格も安価ですが,品質も一般商品に負けず劣らずで,消費者のニーズに沿った販売商品と言えるでしょう。
 しかし,このような手法は,規格等を“指定”して製造委託を行う方式であると判断されており,下請法上の所与の規制を受けることを認識しましょう。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2016年04月15日 | Permalink

乳幼児期における母性優先

 従来の実務では,日本社会の分業化(男性は仕事,女性は家庭)が進んでいたことや,発達心理学の分野においても乳幼児期の愛着形成を母子中心に臨床研究が進んでいたこともあり,乳幼児期における未成年者の親権は「母親」を優先すべきであるとの原則対応が取られていました。
 しかし,男性の子育てへの意識の高まり,父子間における乳幼児期の愛着形成についても未成年者の発達要因となることが明らかにされることで,機械的な「母親」優先対応は取られなくなってきました。

求められる母性とは

 乳幼児の発達は,父母との愛着形成を経て,集団教育等による対外的な人間関係を構築することで加速していきます。愛着度合いは,家庭環境や未成年者と接する時間によって段階が生じ,①監護者と同様に自身を肯定しつつ外敵から守ってくれる存在,②監護者に準じて自身を助けてくれる存在,③遊び相手として許容できる存在,といった差異が乳幼児から見て生じてきます。
 求められる「母性」とは,上記①に相当する存在足り得ることです。

男性側に求められる対応

 勤労時間を調整できる自営業者であれば格別,雇用者で就労している男性の場合には,保育施設だけで乳幼児を養育監護することには限界があり,有力な監護補助者の助力無しに「母性」実現は難しいでしょう。
 監護補助者には,男性側の祖父母にお願いするケースも多々ありますが,なかなか母親と同等の存在足り得る次元に至っているとの証明が困難です。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2016年04月15日 | Permalink

下請法に精通しています!

 当事務所では,中小企業支援の一形態として,下請代金支払遅延等防止法(通称「下請法」)に関する専門性を高めています。

 下請法は,独占禁止法の特別法として,簡易迅速に下請事業者の経済的利益(=適正な報酬を得られる利益)を保護することを目的としています。一見すると親しみの無い法律ですが,親事業者に対する行政上の厳しい制約(4つの遵守事項と11の禁止事項)が課せられ,かつ,違反時には厳しい制裁が課されてしまう点で,親事業者のコンプライアンス対策には欠かせない法律の一つです。

講師実績

 中小企業庁主催の下請代金法セミナーについては,弁護士服部真也,弁護士春名潤也,弁護士柴垣直哉の3名が,中部地方(愛知・岐阜・静岡・三重)及び北陸地方(福井・石川・富山)において,平成25年~28年の4年連続で講師を担当しています。
 平成28年度は,活動の場を更に広げ,北は東京,南は大阪・広島・岡山・博多にも講師として足を運んでいます。

相談対応実績

 当事務所が名古屋市を拠点としていることから,自動車産業を中心に,素形材産業,繊維産業の企業からご相談いただくことが多い状況です。
 下請法の分野では,各産業種別ごとにガイドラインを設けていることがあり,固有の違反行為やベストプラクティス手法が例示されています。しかし,行政が求めるベストプラクティスは,理想論であって実務上は採用することが困難な場合も数多く存在します。
 そこで,親事業者の企業に対しては,実務担当者と共に下請法に抵触しない具体的対策を検討しています。また,下請事業者の企業に対しては,親事業者から違反行為を受けていたとしても,報復を怖れて簡単に声を上げられないのが実情です。そのジレンマを如何にして解消するのか,具体的対策を検討しています。
 是非,下請法に関するご相談は,当事務所にご一報ください。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2016年03月10日 | Permalink

監護の継続性維持

 未成年者の生活状況が,一方当事者の下で一定期間以上平穏に生活している場合において,更なる環境変化が未成年者にとって肉体的・精神的に負担であることから,現状を尊重すべきとの経験則が導かれます。

判断要素としての比重の高さ

 一般的な離婚紛争は,一方当事者が未成年者を連れて別居した上で,示談・調停・訴訟というプロセスを経ることになります。そうすると,別居後から現在に至るまでの間,相当程度の時間が経過してしまうため,結果として子供を連れて別居した当事者が一時的監護者となり,当該判断要素故に親権を獲得し易くなってしまっているのが現状です。
 上記現状は,未成年者の“連れ去り”を間接的に促進しており,専門家の中でも子連れ別居を推奨する方が少なくありません。しかし,無計画な連れ去り行為は,子の福祉に反して違法になる可能性もあり,多くの問題を秘めています。

“現在”ではなく“過去”の監護状況が大切

 “現在”の監護状況のみを尊重すると,未成年者の奪い合いを助長してしまうことになります。そのため,真に検討すべきは過去の監護状況となる訳です。
 この点,男性は仕事,女性は家庭といった旧態依然の家庭世帯では,未成年者と接する時間が圧倒的に女性の方が多いため,離婚時の親権指定には男性不利になります。今でこそ“イクメン”という言葉も生まれてきましたが,家庭を顧みない父親に親権獲得は望めません。
 平素から養育監護に尽力していることを立証するには,地道な積み重ねが求められます。乳幼児であれば,保育園への送迎・連絡帳作成,行政実施の定期健診といった部分への積極的関与が考えられるところです。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2016年03月10日 | Permalink