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清算的財産分与の対象(総論)

 夫婦の財産を法的観点から分類すると,以下の3種類に分けることができます。
 ①婚姻前から各自が所有していた又は婚姻中に親から相続した財産など「名実ともに単独所有の財産」=『特有財産
 ②夫婦が婚姻中に資金を出し合って購入し,登記も共有名義とした不動産など「名実ともに共有の財産」=『共有財産
 ③夫婦が婚姻中に協力して取得した住宅や共同生活の基金とされる預金債権など「名義は一方に属するが実質的には共有の財産」=『実質的共有財産
 まずは,これらのうち,どれが清算的財産分与の対象となるのか,検討していきましょう。

共有状態の解消と言う観点

 財産分与請求権は,婚姻中に形成した財産の分割を求める形成権であり,そのような形成を求める実益は,共有物分割請求や遺産分割請求と同様に,対象財産が共有状態にあることからの解消を求める点にあります。
 そのため,対象財産は,共有財産となります。特有財産は,財産分与の対象外となります。

夫婦別産制との関係

 民法762条1項は,「夫婦の一方が婚姻前から有する財産」と「婚姻中に自己の名で得た財産」は,特有財産であると定めています。他方で,同条第2項で「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産」は共有財産であると法律上推定されます。
 「婚姻中に自己の名で得た財産」については,夫婦間の体内関係においては,単に名義が夫婦の一方に属するというだけでは該当せず,単独所有であると証明できた財産,すなわち他方配偶者の寄与が全く存在しない財産であると証明できる物に限定解釈されています。
 そのため,実質的共有財産についても,財産分与の対象に原則として含まれることになり,例外的に単独所有であると証明できた場合には例外的に対象外となります


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2017年01月14日 | Permalink

財産分与請求権の法的性質

 離婚紛争が増加する中で,離婚時に婚姻期間中に形成した財産の分割を求める手段として財産分与という制度が存在することは,広く周知されてきています。今回は,財産分与請求権(民法767条1項)について,少し掘り下げて見てみましょう。

 財産分与請求権の権利性

 財産分与請求権は,「離婚をした」当事者が請求できるものであり,一般的には離婚請求と同時期に行使されます。
 財産分与請求権は,権利行使可能期間が“離婚成立時から2年”に制限されていますが(民法768条2項但書),当事者の協議成立又は審判・調停があるまでは,具体的な内容が金銭請求なのか,特定不動産の引渡請求や登記手続請求なのか,つまるところ範囲及び内容が不確定・不明確な形成権です。
 不確定・不明確な段階では,たとえ当事者の一方が無資力状態であっても,債権者が債権者代位権によって代わって行使することはできないと考えられています。

財産分与請求権の内容

 財産分与請求権の構成要素には,①婚姻期間中に形成した財産の清算的要素,②離婚後扶養の要素,③離婚自体慰謝料の要素,以上3つが存在しており,個別に具体的分与額を算出します。
 優先順位は①と③が先行し,②については,①及び③だけでは生計維持が困難である場合にのみ認められます(補充性)。
 ③については,財産分与で考慮された場合,別途離婚自体慰謝料を請求できないのかという疑問点が生じます。この点については,判例にて財産分与での斟酌で精神的苦痛が全て慰藉された場合には別途請求することはできないが,財産分与での斟酌だけでは不足している場合には別個に慰謝料請求を実施しても良いとされています。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2017年01月14日 | Permalink