不治の精神病
日本における離婚制度は,協議上(示談・調停)で離婚できない場合,離婚訴訟を提起の上で判決による離婚形成が必要になります。裁判上の離婚については,離婚原因が法定されており,4番目に登場するのが「配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないとき。」(民法770条1項4号)です。
不治の精神病とは一体どんな内容なのか,説明していきたいと思います。
医学的要素を含む法的概念
当該要件は,①強度の,②精神病で,③回復の見込みがない,という3要素が必要になります。いずれも医学的要素を含む法律概念であるため,正常な婚姻共同生活の継続ができるか否かとう観点から判断されることになります。医学的な精神病症例への該当性や回復不能との医学的判断は,必須ではありません。
事理弁識能力を欠く常況であることは必要なく,成年後見人が選任されていることをもって当該要件をすべて満たしていることにはならない点も要注意です。
裁量棄却の可能性
実は,離婚原因に該当していても,裁判所は諸事情を考慮の上で,離婚を認めない判断をすることができます(民法770条2項)。
配偶者(=病者)の今後の療養・生活等について具体的方途(例えば,実家が資産家であったり,扶養的財産分与による生活費支援等。)の見込みがない場合,同条項が適用されるというのが判例の見解です。