モラルハラスメント
モラルハラスメントとは?
近時,離婚原因としてモラルハラスメント(以下「モラハラ」という。)の主張を希望する依頼者が増加しています。
私の経験上でも,①夫婦喧嘩の粋を超えた暴言,②無視・放置,③ステレオタイプな意見の押し付け,④過度の経済的制約,⑤夫婦間扶助義務に反する言動,等がモラハラに該当するとして多く展開されている印象があります。
モラハラ自体,比較的新しい用語であるため,講学上の確定した意味合いを有しておらず,使用する人によって意味の変わる多義的な概念となっているのが現状です。
離婚原因として主張できるのか?
理論構成としては,「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号:婚姻関係が不治的に破綻している場合 )に該当するとして主張・立証を尽くすことになります。
モラハラ主張は,虐待概念における経済的暴力・社会的隔離・心理的虐待とも重なる部分があり,前記3点の虐待手法のうち,虐待とまでは評価できない部分であっても,離婚原因としては有用となる場合があるでしょう。
結論としては,離婚原因の一部として利用することが可能ということです。
単一事象としては婚姻関係不治的破綻への寄与が乏しいため,主張方針としては複数事象を積み重ねていくことが必要になってきます。相手方配偶者の問題言動を具体的に把握し,俯瞰的視点で自身が精神的苦痛を受けるに至ったプロセスを理解し,文章に纏めることが肝要です。立証方針も,陳述書のみでは証拠構造上心許ないため,早期の段階で,弁護士に相談をして,客観証拠の有無を確認することが大切です。