相続人でない者を加えて遺産分割協議をした場合
相続人でない者を加えた遺産分割協議には、(1)遺産分割時からそもそも相続人でない者(表見相続人など)を相続人として加えて協議を行なった場合と、(2)分割協議当時は相続人であった者が、分割協議成立後に相続資格を喪失した場合とがあります。
(2)のケースとしては、婚姻無効判決、縁組無効判決、嫡出子否認判決、親子関係不存在確認判決、認知無効判決など、被相続人と当該相続人との血縁関係を否定する判決が確定した場合や、相続欠格による相続権不存在確認判決、廃除審判の確定など、相続人資格を法的に剥奪する認定がなされた場合などが挙げられます。
次に、相続人でない者を加えた分割協議の効力について、以下2通りに分けて記載します。
1.相続順位に変更をきたす場合
相続人でない者を遺産分割協議に加えていた結果、正当な相続人が遺産分割協議に参加していなかったという場合があります。例えば、被相続人の妻と子Aが共同相続人として遺産分割協議をしたが、その後被相続人(子Aの父)と子Aとの親子関係不存在訴訟が確定した場合などです。この場合、共同相続人は、妻と、子Aの次順位者である被相続人の父母(父母がいなければ兄弟)となりますが、遺産分割協議は妻と子Aとでなされており、父母(又は兄弟)は協議に参加していません。
このような場合には、共同相続人の一部を除外してなされた遺産分割協議となるため、無効と解するべきとされています。
2.相続順位に変更をきたさない場合
この場合についても当然無効とする説もありますが、近時は、非相続人(分割協議後に、相続人でないことが判明した人)に分割された財産を取り戻した上で、これを未分割遺産として真正相続人間で分割すれば足りるとする説が有力です。もっとも、非相続人に分割した遺産が重要なもので、当初の分割協議の効力を維持することが不当であるような場合には、当初の遺産分割協議を無効とするのが妥当でしょう。