父親(または母親)(被相続人)が生きているうちに、相続人が集まって、次のような合意ができ、合意書まで作ったとします。
1 相続人の一人が全てを相続する。
2 その代わり、その相続人は、東京での仕事をやめて、親元に帰り、同居して親の面倒をみる。
 父親(または母親)が死亡した後、親の面倒をみた相続人は、合意書に基づき、全てを相続できるでしょうか。
 結論は、できないのです。合意書は無効というのが裁判所の認定です。相続人の一人が全てを相続するというのは、他の相続人が相続を放棄するということであり、相続放棄は、父親(または母親)(被相続人)の存命中は、法律上できないから、というのが理由です。
 その結論は、私には違和感がありますし、同じように感じる方も多いのではないでしょうか。しかしながら、裁判官は違和感を感じられないようです。
 裁判所の理屈から判断すると、自分以外の相続人を、東京から親元に呼び寄せるために、「全て相続させてやるから」と条件提示し、合意が無効であることをわかっていながら、合意書にサインをしても、同じ結論になると思われます。
 うーん。これで良いのだろうか。
 しかし、これが現実です。


シェアする