アメリカでは交通事故を起こしても運転手がその場で謝ることはしないということを聞きます。謝ると責任を認めたことになる、というのがその理由の一つのようです。
 では、日本の場合はどうでしょう。
 自分の落ち度が相対的に低いような場合でも、相手方の怪我の方が重篤だったときは一言謝ることが少なくないように思います。むしろ、加害者が謝罪をしないことで、話し合いによる解決が困難になるケースはよく見受けられます。ごく一般的な口頭での謝罪があったことのみを以って、後日の裁判が直ちに不利になることは通常ありませんから、常識的な対応をすることが肝心ではないかと思います。


 交通事故の結果,あなたが損害を被ったときに,誰がその責任を負うのでしょうか。逆に言うと,あなたは誰に対して損害の賠償を請求すべきでしょうか。
 あなたの損害が自動車によるものであれ,自動二輪車によるものであれ,事故について過失のある運転手が責任を負うのは原則として当然です。
 しかし,運転手にしか責任を追求できないとすれば,運転手が無保険であったり,未成年であったりした場合には困った事態になります。結論から言えば,運転手以外にも,その自動車・自動二輪車の所有者,また運転手が未成年であれば監督者,運転手の雇用者等も責任を負う場合があります。


 交通事故が、人身事故(人損)か物損事故(物損)かで、その後の処理が大きく変わります。
 一例を挙げると、人損の場合は自動車損害賠償保障法の適用がありますので、俗に強制保険と呼ばれることもある自賠責保険によって被害の回復が図られます。 また、人身事故の場合、加害者が単なる過失でも刑事責任を追及されますが、物損事故の場合は通常ありません。そのため、物損事故では警察の作成した実況見分調書等が開示されず、後日、民事裁判となったときに事故態様に関して見解の食い違いが表面化することも少なくありません。
 従って、交通事故に遭われて身体の異常を感じたときは、直ぐに病院で診察を受けて診断書を作成してもらい、警察にも人身事故として処理するよう申し出ることが必要です。


 交通事故が発生した場合に,問題となる「責任」には主に3種類のものがあります。具体的には,「刑事責任「行政上の責任」「民事上の責任」の3つが問題となります。
 「刑事責任」は,違法な結果を発生させたことに対する刑罰の問題で,例えば事故の結果,他人を死亡させてしまったり怪我をさせてしまった場合には業務上過失致死傷罪という問題になります。近時,悪質な飲酒事故等が社会問題化し,厳罰化が叫ばれることがありますが,これは「刑事責任」の問題です。
 次に,「行政上の責任」があります。行政上の責任は,免許の停止・取消し・減点等の問題です。最後に,「民事上の責任」があります。
 民事上の責任は,交通事故により他人に損害を与えたことについて,金銭的賠償という形で問題となる責任です。 刑事責任や行政上の責任は,国が加害者に対して下すものですので,被害者の方が積極的に何か行動しなければならないケースは通常ありません。
 そこで,本サイトでは主に「民事上の責任」に関するトピックを取り上げています。


 会社の従業員が業務に従事中起こした交通事故について、ケガを負った被害者や命を落とした被害者の遺族は、従業員本人だけでなく、雇用主である会社に対しても、損害賠償を請求することができます。会社は、従業員が業務に従事中に起こした事故については、民法715条の使用者としての責任と、自動車損害賠償保障法3条の運行供用者としての責任を負っているからです。
 会社に対して損害賠償を請求することのメリットとして、従業員個人に対して請求する場合と比べて賠償金を回収することができる可能性が高いという点にあります。交通事故では賠償金が高額になって個人では払いきれない額になってしまうことがあり、個人よりも資産を多く持ち、社会的にも責任がある会社のほうが賠償金を確実に払ってくれることが多いからです。また、従業員個人が自動車保険に加入していなくても、会社が自動車保険に加入していれば、会社の保険を使って賠償金の支払いを受けられることもあります。
 したがって、交通事故の被害にあってケガをした場合や命を落としたという場合、相手方が会社業務の従事中でなかったかという事情の有無を確認することも重要になってきます。